仮説検定の論理と「5ステップの型」(統計検定2級 8.1)
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第8章 仮説検定の解説記事
仮説検定は「偶然のばらつきだけでこの結果が出ることは、どのくらい珍しいか」を測って、主張の正しさを判断する方法です。直接「正しい」と証明するのではなく、否定したい仮説を仮に正しいとおいて、その仮定のもとで観測結果が起こりにくいかを調べる背理法に似た論理をとります。
帰無仮説と対立仮説
帰無仮説 $H_0$:差がない・効果がない(例 $\mu=\mu_0$)
対立仮説 $H_1$:示したい主張(例 $\mu\neq\mu_0$、$\mu\gt\mu_0$、$\mu\lt\mu_0$)
$H_0$ には必ず等号が入り、$H_1$ の向きで両側検定か片側検定かが決まる。
検定統計量の分布を具体的に計算するには、母数を1つの値に固定する必要があります。「$\mu=50$」なら分布が決まりますが、「$\mu\neq 50$」では決まりません。だから計算の土台になる等号側を $H_0$ におき、言いたいことは $H_1$ に回します。
5ステップの型
| ステップ | やること | 注意点 |
|---|---|---|
| ①仮説 | $H_0$ と $H_1$ を立てる | $H_1$ の向きはデータを見る前に決める |
| ②有意水準 | $\alpha$(通常 0.05 か 0.01)を決める | 第1種の過誤の確率の上限になる |
| ③統計量 | $H_0$ のもとでの分布が分かる統計量を選ぶ | z・t・$\chi^2$・F のどれか |
| ④計算 | データから統計量の実現値(と p 値)を求める | 標準誤差の式を取り違えない |
| ⑤判定 | 棄却域に入る(p 値 $\le\alpha$)なら $H_0$ を棄却 | 棄却しないときは「採択」ではなく「棄却できない」 |
数値例
ある部品の長さの母平均が 50 mm といえるかを調べる。母標準偏差 $\sigma=10$ は既知、$n=25$ で $\bar{x}=54$ だった。
①$H_0:\mu=50$、$H_1:\mu\neq 50$ ②$\alpha=0.05$ ③$Z=\dfrac{\bar{X}-50}{\sigma/\sqrt{n}}$ は $H_0$ のもとで $N(0,1)$ に従う ④$z=\dfrac{54-50}{10/5}=2.0$、両側 p 値 $=2\times 0.0228=0.0456$ ⑤$0.0456\lt 0.05$ なので $H_0$ を棄却し、「母平均は 50 mm と異なる」と結論する。
信頼区間との関係
上の例の 95% 信頼区間は $54\pm1.96\times2=[50.08,\ 57.92]$ で、50 を含みません。両側 5% 検定で $H_0:\mu=\mu_0$ が棄却されることと、95% 信頼区間が $\mu_0$ を含まないことは同じ判定になります。なお「95% 信頼区間」とは、同じ手順で何度も区間を作ると約 95% の区間が真の $\mu$ を含む、という手順の性質を表す言葉です。求めた1つの区間に $\mu$ が入る確率が 95% という意味ではありません。
- 「$H_0$ を棄却できなかった ⇒ $H_0$ が正しいと証明された」は誤り。証拠が足りなかっただけです。
- p 値は「$H_0$ が正しい確率」ではありません。「$H_0$ が正しいとしたとき、観測値以上に極端な値が出る確率」です。
- データを見てから片側・両側を都合よく選ぶのは不適切です。
仮説の設定問題では「主張したいこと=$H_1$」「等号=$H_0$」とまず書き出します。「増えたか」「減ったか」と方向が問われていれば片側、「変化したか」なら両側です。2種類の過誤と検出力は「2種類の過誤と検出力」の記事でまとめて扱います。
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