点推定と推定量の望ましい性質(統計検定2級 7.1)

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第7章 推定の解説記事

母数を1つの値で言い当てるのが点推定です。推定の計算式(推定量)はいくつも考えられるので、「どの推定量がよいか」を比べる物差しが必要になります。代表的なのが不偏性・一致性・有効性です。

望ましい性質($\hat\theta$ は母数 $\theta$ の推定量)
・不偏性:$E[\hat\theta]=\theta$。平均的に的の中心を狙っている。
・一致性:$n\to\infty$ で $\hat\theta$ が $\theta$ に確率的に近づく。
・有効性:不偏推定量どうしなら分散が小さいほどよい。
・平均二乗誤差:$\mathrm{MSE}=E[(\hat\theta-\theta)^2]=V[\hat\theta]+(\text{バイアス})^2$
なぜ複数の基準が要るのか
不偏でも分散が大きければ1回ごとの推定は大きく外れます。逆に少し偏っていても分散がとても小さければ、MSE では勝つこともあります。的当てにたとえると、不偏性は「着弾の中心が的の中心にある」、有効性は「着弾がまとまっている」ことです。

数値例:どちらが良い推定量か

$X_1,X_2,X_3$ が独立に平均 $\mu$、分散 $\sigma^2$ に従うとします。

推定量期待値分散評価
$\bar X=\frac{X_1+X_2+X_3}{3}$$\mu$$\frac{1}{3}\sigma^2\approx0.333\sigma^2$不偏・最小分散
$T=\frac{X_1+2X_2+X_3}{4}$$\frac{1+2+1}{4}\mu=\mu$$\frac{1+4+1}{16}\sigma^2=0.375\sigma^2$不偏だが $\bar X$ より劣る
$X_1$ だけ$\mu$$\sigma^2$不偏だが一致性なし
$\frac{X_1+X_2+X_3}{4}$$\frac34\mu$$\frac{3}{16}\sigma^2$分散は小さいが偏りあり

線形な推定量 $\sum a_iX_i$ の期待値は $(\sum a_i)\mu$ なので、係数の和が1なら不偏。分散は $(\sum a_i^2)\sigma^2$ で、係数が均等なほど小さくなります。

よく出る推定量の性質

推定量不偏一致
標本平均 $\bar X$(母平均)○○
標本比率 $\hat p$(母比率)○○
不偏分散 $S^2$(母分散)○○
$n$ で割る標本分散(母分散)×(過小)○
$S=\sqrt{S^2}$(母標準偏差)×○

推定量の作り方には、標本の平均などを母集団の対応する量に等しいとおくモーメント法や、観測データの起こりやすさを最大にする最尤法があります(「最尤推定の具体例」の記事を参照)。

ひっかけ
・「不偏推定量なら一致推定量」「一致推定量なら不偏」はどちらも誤り。$X_1$ だけの推定量は不偏でも一致しません。$n$ 割りの分散は一致でも不偏ではありません。
・「最尤推定量は常に不偏」は誤り(正規分布の分散の最尤推定量は $n$ 割り)。
・$E[S^2]=\sigma^2$ から $E[S]=\sigma$ とは言えません。
得点のコツ
推定量の比較問題は、①係数の和で不偏かを判定、②係数の2乗和で分散を比べる、の2ステップでほぼ解けます。「不偏性」は期待値、「有効性」は分散、「一致性」は $n\to\infty$ と、それぞれ何を見る性質かを対応させて覚えましょう。

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