統計量は「揺らぐ」— 標本分布という考え方(統計検定2級 6.1)

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第6章 標本分布の解説記事

同じ母集団から標本を取り直すたびに、標本平均や標本比率の値は少しずつ変わります。この「取り直したら値がどう散らばるか」を確率分布として表したものが標本分布で、推定や検定の議論はすべてここから始まります。

母数と統計量

用語の整理
・母数(パラメータ):母集団の特性値。母平均 $\mu$、母分散 $\sigma^2$、母比率 $p$ など。固定された定数だが、ふつうは未知。
・統計量:標本 $X_1,\dots,X_n$ から計算する量。$\bar X$、$S^2$、$\hat p$ など。標本ごとに値が変わる確率変数。
・標本分布:統計量が従う確率分布。
・標準誤差:統計量の標準偏差(推定値の「揺れ幅」)。
なぜ分布で考えるのか
手元の標本は、ありえた多くの標本のうちの1つにすぎません。1回分の $\bar x$ だけを見ても、それが母平均にどれくらい近いのかは分かりません。「取り直したらこの範囲でばらつく」という分布が分かって初めて、「この値は母平均から大きくずれていそうか」を確率で語れます。信頼区間も $p$ 値も、この分布の裾の面積を使っています。

小さな数値例:全部の標本を並べてみる

母集団を $\{2,4,6\}$(母平均 $\mu=4$、母分散 $\sigma^2=8/3$)とし、大きさ $n=2$ の標本を復元抽出で取ります。ありうる標本は $3\times3=9$ 通りで、それぞれの標本平均は次のとおりです。

標本平均 $\bar x$23456
通り数12321
確率1/92/93/92/91/9

この分布の平均は $4$(母平均と一致)、分散は $\{(2-4)^2\cdot1+(3-4)^2\cdot2+0+(5-4)^2\cdot2+(6-4)^2\cdot1\}/9=12/9=4/3$ で、ちょうど $\sigma^2/n=(8/3)/2$ になっています。母集団は一様に散らばっていたのに、標本平均は中央に集まる山形になる点にも注目してください。

見ているものばらつきの指標n を増やすと
母集団の個々の値母標準偏差 $\sigma$変わらない
1つの標本内のデータ標本標準偏差 $s$$\sigma$ に近づく
統計量(例:$\bar X$)の標本分布標準誤差 $\sigma/\sqrt n$小さくなる
ひっかけ
・「標準偏差」と「標準誤差」の取り違え。データのばらつき($\sigma$)と、平均値のばらつき($\sigma/\sqrt n$)は別物です。
・「母平均は確率変数」は誤り。確率的に動くのは統計量の側で、母数は定数です。
・大文字 $\bar X$(確率変数)と小文字 $\bar x$(実現した値)の区別も、選択肢の言い回しで問われます。
得点のコツ
問題文で「平均」が出てきたら、それが母平均・1組の標本平均・標本平均の分布の平均のどれかをまず判定しましょう。具体的な計算は「標本平均の分布」の記事、分布の形については「大数の法則と中心極限定理」の記事で扱います。

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